在韓米軍撤退がもたらす朝鮮半島動乱のシナリオ

マティス長官の引退で高まった在韓米軍撤退の可能性

年の瀬が押し詰まって電撃的なマティス米国防長官の引退発表がありました。
 マティス長官はシリアからの米軍撤退に強硬に反対していてそれがトランプ政権からの離脱に繋がったということです。
 トランプ大統領は在韓米軍撤退を匂わせる発言も繰り返してきましたが、それを抑えていたマティス長官がいなくなったことで在韓米軍撤退が現実化する可能性が高まってきました。
 中央日報からも米韓関係で高まる危機を訴える記事が出ています。
マティス空白に防衛費分担金非常事態に直面したソウル 12月26日(水)09時23分

マティス長官が辞任することになり在韓米軍駐留問題にも影響が及ぶ可能性がある。ワシントンポスト副編集長の著書によると、年初にトランプ大統領が「在韓米軍に巨額と投入する理由があるのか」と撤収を主張すると、マティス長官は「米軍駐留は第3次世界大戦を防ぐため」と述べながら断固阻止したという。
安保専門家はマティス長官が辞任して生じる空白を懸念している。マティス長官が退いた後、トランプ大統領が在韓米軍を減らす状況になった場合、これを牽制する人は多くないということだ。

中央日報

穏健派マティス長官と現実的戦略家のトランプ大統領

世界のメディアでは穏健な戦略家のマティス国防長官 vs 行き当たりばったりの行動を取るトランプ大統領という評価が一般的です。
 ただ、マティス長官は穏健派であるが故に損切り出来ない優柔不断な面を持ち合わせていて、米国の利益を最優先に考えるならトランプ大統領の方が優れた戦略家です。
 トランプ大統領の脳裏にある戦略と合致していると思われる次の記事があります。
盟友マティスが去ってもトランプが譲らぬ「敵は中国のみ」の正答
 この記事は「共産主義国家として強大になり過ぎた中国に対峙して生き残るためには中東を潔く切り捨てることが正しい戦略である」という主旨で書かれています。
 中東で起きている悲惨な事態に目を向ければマティス長官の主張も理解できますが、米国の生き残りを最優先にして冷徹に考えるならば敵を中国のみに絞る戦略しか選択肢が無いのです。

対立するあなたの人権私の人権

共産主義者やリベラルの仮面を被った権力の亡者は人権・平等をスローガンにした甘い言葉で人を欺き、いったん権力を手に入れたら徹底的に弾圧することで権力を維持しようとします。
 人間にとって人権・平等は最も好ましいものであると同時に基本的に対立の原因であることを忘れてはなりません。
 誰でも努力すれば報われるチャンスがあり、酷い人権侵害の無い国を維持するためには法治を徹底し必要に応じて国民に我慢をしてもらう政策運営が必要となります。
 文大統領のように綺麗ごとばかりを主張する政治家の政策は欺瞞だらけで結果として国家全体を悲惨な状態に導くことになります。
 外交的戦略においても全世界の人権を守ろうとすることは自国民を不幸に陥れる結果になるのが現実なのです。
 その意味でトランプ大統領の戦略は米国民にとっては全く正しいと言えますし、他国にその戦略を非難する権利はありません。

トランプ大統領の交渉スタイル

 トランプ大統領は今までの政治家と較べて損得を前面に出した無遠慮な交渉をするのが特徴です。
 これが上品ぶったメディアに嫌われる最大の原因なのですが全く相手のことを考えない悪辣な政治家ではありません。
 表面で綺麗ごとを言いながら日米を戦争に巻き込んだルーズベルト大統領(書籍ルーズベルトの開戦責任から)に較べれば天使と悪魔ほどの差があります。
 トランプ大統領はドライな戦略家であると共に個人的な信頼関係を重視する傾向がある人です。
 シリアの米軍撤退に際してもトルコのエルドアン大統領との電話中に周囲のアドバイスを無視してシリア撤退を決定しています。(CNN:トランプ氏のシリア撤退、トルコ大統領との電話会談中に表明
 エルドアン大統領は700億円の豪邸に住み大規模なデモを強制的に排除したりするところから朝日新聞の記事では独裁者との称号を得ていますが、正当な選挙で選ばれた民主国家の大統領です。
 この例からトランプ大統領はメディアの評判は無視して取引相手として信頼できると思えばその人の言葉を参考にした行動を取ることが判ります。
 トランプ大統領にとって文大統領は全く信頼できない相手でしょうから、米韓交渉で韓国はひどい扱いを受ける可能性があります。

北朝鮮交渉の材料となる可能性も出てきた在韓米軍撤退

金正恩の人間性は別として交渉相手としてしたたかな人間であることはトランプ大統領も評価しています。
 トランプ大統領は在韓米軍撤退を実行したいと思っていますし、金正恩にとっても在韓米軍撤退は長年の夢ですから、米朝首脳交渉が実現した場合に在韓米軍撤退を取引材料として持ち出す可能性はあると思います。

米国が北朝鮮の核を容認するシナリオ

中央日報に専門家が予想する2019年の北核シナリオが載っていたので文章を簡略化して引用してみました。

専門家が予想する来年の北核シナリオは大きく4つある。

まずは北朝鮮の金委員長が電撃的に完全な非核化を受け入れるケースだ。しかし北朝鮮は米国との高官級会談を取り消し、北朝鮮に不利な実務交渉を避けている。したがって金委員長が完全な非核化を電撃的に受け入れる可能性は高くないとみられる。
2つ目のシナリオは、米国が軍事的に北朝鮮にまた圧力を加え、北朝鮮が挑発し、不利になった北朝鮮がミサイル発射や核実験など高強度挑発で対応したり、交渉破棄を宣言する可能性もある。問題は北朝鮮がこの1年間に相当な数の核兵器を生産し、保有している点だ。このため米国としては北核によって数十万-数百万人の人命被害を招く軍事オプションを選択するのが難しいと指摘されている。北朝鮮も指導部が完全に除去される極端な選択は避けるはずだ。このため米国、北朝鮮ともに破局は望まないとみられる。
3つ目は、トランプ大統領と金委員長が原則的に合意するが、完全な非核化には達しないケースだ。「半分の非核化」合意だ。米国は北朝鮮が非核化するまでは制裁を解除しないという基本立場を維持している。しかし弾劾と大統領選挙をめぐる圧力の中で成果を出さなければいけないという焦りからトランプ大統領が制裁緩和カードを取り出すかもしれないという声もある。また、トランプ大統領が米国に直接的な脅威となる北朝鮮のICBMだけを除去し、現水準で北核を凍結することで満足する可能性も排除できないという。この場合、北朝鮮は韓国と日本を脅かす中・短距離核兵器が事実上認められ、核国家として残る。専門家はこのようになる可能性が高いとみている。金委員長は来年、トランプ大統領との2回目の首脳会談を通じて、非核化実務協議を無視したビッグディール(big deal)を狙うことも考えられる。
最後のシナリオは今年下半期のような膠着状態が来年も続くケースだ。トランプ大統領と金委員長が忍耐を持ってお互い最大利益点を模索しているが、接点を見いだせない状況だ。韓国の政治事情も容易ではない。文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対する国政支持度が40%半ばに落ちたうえ、野党との「協治」も見られない。こうした状況で文大統領が来年も強力な対北朝鮮和解・支援政策を進められるかは疑問だ。

中央日報

専門家の予想としてトランプ大統領が保身を考えた結果北朝鮮が中・短距離核兵器を残した各国家として残るシナリオの可能性が最も高いとのことです。
 本当にそうでしょうか?
 北朝鮮を核保有国として認める結果になる方が、トランプ支持派の失望はよほど大きいと思います。
 北朝鮮との取引を口実に在韓米軍撤退を加速し、その結果朝鮮半島が内乱に陥るシナリオはないのでしょうか。

在韓米軍撤退後の韓国

日本戦略研究フォーラムが上の記事と同じく米国が北朝鮮を核保有国として認めざるを得ないのではないかとの論説を発表しています。

 米国の強硬姿勢はコケ脅しだ。今は何をやっても米国は軍事力行使をしないとの深い読みが金正恩朝鮮労働党委員長にはあり、危険な賭けに出たのだろう。

(中略)

 結論から言おう。米国は軍事力行使をしない、いやできないと筆者は考えている。トランプ大統領がレッドラインについては明確にしてこなかった理由もここにある。

(中略)

この背景にあるのは、次のような軍事的「手詰まり」状態である。
 ① ソウル周辺には北朝鮮の火砲の射程圏に約2000万人が住んでいる。言わば約2000万人が人質状態といえる。核やミサイル施設を破壊するには、同時に38度線に配置された約1万門とも言われる北朝鮮軍の火砲を奇襲的に一挙に無力化しなければならない。これには、海空軍の航空戦力増派が必要である。だが増派にはロジスティックも含めると最低1~2か月はかかり、奇襲性が失われるというジレンマがある。
 ② 軍事力行使の場合、反撃による犠牲は日本、韓国にも及び、両国政府の事前承諾は欠かせない。特に韓国は多数の犠牲者が予想され、韓国政府の合意は欠かせない。だが、文在寅韓国大統領は北朝鮮攻撃には強硬な反対姿勢を示しており、承諾を得るのは難しい。
 ③ 小規模軍事作戦で「斬首作戦」もオプションにあるが、リアルタイム情報(ヒュミント情報)が決定的に不足している。「ポスト金正恩」の出口戦略もない。また、この作戦のチャンスは一回しかない。しかも金正恩の死を検証できる攻撃でなければならない。(死体が確認できないような攻撃は失敗)失敗すれば反撃の口実を与え、ソウルが「火の海」になる可能性が大きい。
 ④ 中朝友好協力相互援助条約を結んでいる中国の承諾、最低限「黙認」の取り付けが必要。この条約は自動参戦規定がある。
 ⑤ 国連での何らかの武力行使容認決議が必要である。北朝鮮の「米国をこの世から消し去る」といった激しい恐喝だけであれば、自衛権行使は認定されない。国連のお墨付きなしでは国際社会のみならず米国議会、米国民の支持も得られないだろう。
 ⑥ 独裁者に理性的対応は期待できない。軍事力行使によって、絶望の淵に追いやると自爆的行為も考えられる。核兵器を保有するので予想を超える被害が出る可能性がある。 

日本戦略研究フォーラム 北朝鮮の核保有を認めざるを得ない米国

トランプ大統領が韓国を見捨てる戦略がもたらすシナリオ

どちらの論説も米国が軍事オプションを使用できない根拠を「韓国の損害が大きすぎるから」としています。
 しかしそれは甘い願望かもしれません。
 トランプ大統領が在韓米軍の撤退を加速し、必要な時は在日米軍と空母を使って北朝鮮を叩くという構えを取る可能性もあります。
 北朝鮮は長年にわたって韓国から在韓米軍を追い出すことを悲願として諜報戦を仕掛けて来ました。
 その目的は韓国侵攻しかありません。
 国際世論を考えれば米国が先に手を出すことは考えにくいですが、経済的な締め付けを続けた結果追い込まれた北朝鮮が在韓米軍撤退を最後のチャンスと見て南侵に踏み切るシナリオもあります。
 その場合、米国には韓国保守派の人権保護と世界に危機をもたらす北朝鮮の核を取り除くという大義名分が生まれます。
 その機会を捉えて空爆で北朝鮮の核を叩き潰せば米国は最小限の人的損害で北朝鮮の核を取り除くことができます。
 この場合韓国はもちろん日本にも被害が発生しますが、大義名分を得た米国は韓国の事情は無視して北朝鮮の核を徹底的に叩くでしょう。

米朝開戦に至るこのシナリオは実質的な宣戦布告だったハルノートで日本を追い込み日本が先に手を出したとして世論を味方につけた真珠湾攻撃と同じ構図です (書籍ルーズベルトの開戦責任から) 。
 ルーズベルト大統領はスターリンにそそのかされて太平洋戦争を開始し、日本だけでなく米国にも多大な人的被害をもたらしました。
 ルーズベルト大統領が事前に予想していた真珠湾攻撃では敢えて情報を握りつぶし、目的のために自国の兵隊を見殺しにするという共産主義者と同じ行動をとりました。
 トランプ大統領の場合は米国の利益を最優先に考えた結果であり、米軍の人的被害は最小限にとどまりますから、米国民にとってはトランプ氏の方がずっと好ましい大統領と言えます。
 日本としては実現してほしくないシナリオですが歴史は繰り返します、日本も対応を考慮しておく必要があります。

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